ブドウ 品質と品種

 

白ブドウ品種

アイレン/モスカテル・グラノ・メヌード/パレリャーダ/ペドロ・ヒメネス/リースリング/ソーヴィニョン・ブラン/トロンテス/ベルデホ/ヴィオニエ/マカベオ(ビウラ)/シャルドネ/ゲヴュルツトラミネール/

 

黒ブドウ品種

センシベル(テンプラニーリョ)/ピノ・ノワール/ガルナチャ・ティンタ/グラシアーノ/マルベック/メンシア/メルロー/モナストレル/モラビア・ドゥルセ(クルヒデラ)/プティ・ヴェルドー/シラー/カベルネ・ソーヴィニヨン/カベルネ・フラン/ボバル/

 

センシベル(テンプラニーリョ)

原産地呼称ラ・マンチャの主要黒ブドウ品種は、スペイン全国でその高い品質で知られるセンシベルです。

単一品種で、或いは他の品種とクパージュして熟成タイプの赤ワインを作る際、ラ・マンチャで最も使われている品種です。品質は極めて高いものですが、生産量はそれほど多くありません。

他の地域では、ウル・デ・リェブレ(オホ・デ・リエブレ)、ティンタ・デ・トロ、ティント・フィノ、ティント・デル・パイス、ハシベラ、ヴェルディエルといった名前で知られています。

早熟品種で、コンパクトで均整の取れた形の中程度の大きさの房をつけ、果皮はやや厚みがあり果肉はやわらかく果汁は無色です。

 

アイレン

メセタ南部(スペインの中央高原南部)で非常に多く見られる白ブドウ品種で、カスティーリャ・ラ・マンチャ州を中心にスペインの全栽培面積の32%を占め、最も広く栽培されている品種のひとつです。

他の地域では、ライレン、マンチェガ、バルデペニェーラ、フォルカヤットといった名前で呼ばれることもあります。

極端に乾燥した暑い気候にもよく適合し、非常に生産性の高い品種です。
短梢剪定を要し、ゆるく大きな黄色の房をつけ、果皮は平均的な厚みで果肉はやわらかく果汁は無色です。

アイレン種のブドウからは、芳香が良く適度な酸度のワインができ、ヤングワインや伝統的ワインの製造には非常に優れた特性を備えています。

 

ピノ・ノワール

フランス由来で温暖な地域に良く適合するこの興味深い黒ブドウは、柑橘系の優れた風味があることから通常、白シャンパンのベースとして使われます。発芽も成熟も早く、近年は世界中で広く栽培されています。春霜、夏の雨、酷暑の影響を受けやすい品種です。また秋の気温が低いと成熟しにくく産量が少なくなります。果粒は小さく、果皮は濃い紫色で着色に優れていますが、比較的早く色褪せし、他の黒ブドウ品種に比べると短時間でオレンジ色の色調を呈するワインになります。この品種からはフルボディで力強い複雑なアロマを持ったワインができます。

 

ガルナチャ・ティンタ

原産地呼称ラ・マンチャの赤ワインではセンシベルに次いで2番目に重要な品種で、生産性が高いことが特徴です。スペインではほぼ全てのワイン産地で栽培されています。他の地域では、ガルナッチャ、アラゴネス、ヒロ、リャドネル、ティント・デ・ナバルカルネロ、ティント・ナバロ、ヒロネットといった名前で知られています。エブロ渓谷の原産だと言われ、語源はあいまいながらも名前は、この品種から作られるワインの色を表す「ガーネット」(grenate)から来たとされています。房は黒く、楕円形で中くらいの大きさでコンパクトです。果実は果皮が薄く果肉は非常にジューシーで果汁は無色です。

 

グラシアーノ

収穫量が少なく病害に強い黒ブドウ品種でリオハやナバラの原産種です。干ばつによく耐える株で、かなり樹勢が強く、発芽は若干遅めです。果実は濃い黒色で小さく、果皮は薄く、酸味とアロマのある鮮やかな赤い色のマストがとれますが、酸化しやすい特徴があります。酸の利いた鮮やかな赤色のワインができ、若いうちはタンニンが強く粗く尖っていることが多いものの、樽や瓶で熟成させるうちに素晴らしい進化を遂げる品種です。このため、長熟タイプのワイン向けに、よくテンプラニーリョ種と合せてクパージュされます。

 

マルベック

フランス由来の黒ブドウ品種で、中程度の大きさのかなりゆるい房をつけ、晩熟で、果実は小粒から中程度の大きさの青みがかった黒い色で、非常に薄い果皮に包まれています。アルゼンチンでは大変よく知られた品種で、しばらく前からスペインでも作付され始めました。色が濃く、頑健なタンニンがあり濃厚で酸のバランスも良いふくよかなワインができます。程よい果実感(アメリカンチェリー、プラム、いちご)が口の中で心地よく長く続きます。

 

メンシア

カベルネ・フランと似て生産性の低い黒ブドウ品種で、レオン県とサモラ県がガリシア州と接する地域でよく見られます。房も果実も中程度の大きさで、果皮が厚く、果汁は無色で、ニュートラルな味香です。ヤングワインに程よい果実感や、きれいな色、酸味、熟成ポテンシャルを与えます。また甘味と豊かなアロマが素晴らしく、程よいアルコール度が出ます。長期の熟成に耐え、独特のビロードのような口当たりが特徴です。非常に活き活きした軽やかでソフトなアロマと果実感をもったロゼを生み出します。

 

メルロー

フランス、ボルドー地方由来の黒ブドウ品種メルローは、世界中のワイン生産国で栽培されています。樹勢が強く、涼しい土地に合う品種で、原産地呼称ラ・マンチャの生産地域によく適応します。発芽は早く、春霜やベト病に弱いです。房は中程度の大きさの円筒形で、果実は黒みがかった青色をしています。果皮は厚く、果肉はジューシーで心地よい味です。非常にアロマの豊かなワインができます。

 

モナストレル

甘味が強く生産性の高い垂直に成長する黒ブドウ品種で、スペイン東部(レバンテ)地方の特徴的なブドウ品種で、気温の高い場所を好みます。果実はベト病や酢酸腐敗に弱く、果粒は小さく黒っぽい青色で厚い果皮に包まれています。通常、若いワインには紫の色調の濃いルビー色と高いアルコール分を与えますが、かなり酸化力が強いため時間と共にセピア色やオークル色へとかすれていきます。甘口のオールドビンテージワインにも向いています。

 

モラビア・ドゥルセ(クルヒデラ)

アルバセテ県やクエンカ県に広く見られ、非常に良く適応した生産性の高い品種です。クルヒデラ、モラヴィア・ドゥルセ、ブルヒデラ、トルヒデラといった名前でも知られています。収穫量が多く、青みがかった黒色をした円盤状の大きくコンパクトな房をつけ、果汁は無色、果肉はカリカリした歯触りがありニュートラルな味香です。その年の収穫されたブドウで若飲みワインを造る際、ガルナチャ種と合せてクパージュすると良くマッチします。

 

プティ・ヴェルドー

ボルドー由来の黒ブドウ品種で、メドック地方で非常によく使われます。横に這う品種で生産性は中程度です。ウドンコ病に弱く、小ぶりから中程度の大きさの房をつけます。色が濃くタンニンが豊富な成熟したワインができることから、少量で柔らかさを出す他の品種とブレンドするのに適しています。

 

シラー

ローヌ渓谷原産の黒ブドウ品種で、日照量が多く気温の高い地域で卓越したブドウを産します。オーストラリアやカリフォルニアで多く導入され、ラ・マンチャでもよく適応し、素晴らしいブドウを生みだしています。シラーズの名前でも知られています。寒冷地でもよく適応しますが暑い気候で良いパフォーマンスを示し、やや軽めのワインができます。中程度の大きさの円筒形の房をつけ、青みがかった果実で、果皮は適度に厚く、果肉はジューシーです。

 

カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨンはフランス原産の黒ブドウ品種で、世界中のブドウ栽培界の女王です。ラ・マンチャでは3番目に多く栽培されている黒ブドウ品種で、農産物としてもワイン醸造の上でも非常に高いパフォーマンスを示す選び抜かれた品種で、この地域の気候に完全に適応しています。収穫量は多くなく、濃い色、安定性、力強いタンニン、活気ある酸が特徴の品種で、若いうちは堅いワインですが、長期熟成する可能性を秘めたワインができます。他の黒ブドウ品種とのクパージュは計り知れないマッチングが得られます。

 

カベルネ・フラン

樹勢の強い株で垂直に成長する早熟の黒ブドウ品種です。有名なカベルネ・ソーヴィニヨンと同様に、ボルドー地方の原産で、ややソフトなワインができます。房は中程度から小さ目のコンパクトで細長く、黒みがかった青い色の果実が薄い果皮に包まれています。寒冷気候で湿度の高い土壌に馴染み、ベト病やウドンコ病、ダニに弱い品種で、ワインに香り高いアロマを与えると共に、色合いは通常は中程度から薄めで、コクはあまりなく、結果的に軽く飲み心地の良いワインになります。ただ長期熟成能力は高く、カベルネ・ソーヴィニヨンと合せたクパージュに多く使われます。

 

ボバル

生産性の高い黒ブドウ品種で、ウドンコ病やボトリティス菌の影響を受けやすい色素を豊富に含みます。クエンカ県、アルバセテ県、バレンシア県など、いくつかの地域ではロゼワインの製造によく利用されます。また、フレッシュでタンニンがあり、色のしっかりした、どこか渋い苦みと素晴らしい酸のある赤ワインにもなります。アロマは強すぎず、けれどもややフルーティな風味があります。通常は、場合によって風味を和らげるような他の品種とブレンドしてヤングワインや短期熟成タイプのワインが造られます。

 

モスカテル・グラノ・メヌード

地中海に面した東部盆地が原産の品種だけあって、暖かい気候に適しています。樹勢は強くなく、小さい房で、発芽が早く、石灰質土壌で良く育ち、ある程度干ばつにも耐えられます。収穫量が低いことが幸いし、芳香高く豊かなアロマがありフレッシュで、同時にアルコール度が高く酸も多い、ただし味わいは非常に広がりのあるおいしいワインができます。かつてはほぼ全てをスイートワインの生産のみに使っていましたが、今日では辛口のヤングワインや、ある程度の糖度で樽発酵させたワインなど素晴らしいワインも造られています。

 

パレリャーダ

非常に生産性の高い白ブドウで、通常はスパークリングワインを造る際のベースに使われます。この品種で作られるワインは、アルコール度が高くなく、淡い色で、デリケートなアロマがあり、あっさりしたものになります。スペイン原産種で、主にカタルーニャで栽培され、基本的にカバの生産に使われます。収穫量は多いものの病害や干ばつに弱い性質があります。中程度から大ぶりの房をつけ、アルコール度の低いワインができます。

 

ペドロ・ヒメネス

原産はアルザス地方ながら、アンダルシアによく見られる品種で、辛口のフィノにも、凝縮感のあるしっとりとした甘口ワインにも使われています。樹勢が強く、ツル」は垂直に伸び、不均一な房には小さく果皮の薄い大量の果粒が成り、果実は非常にジューシーで甘くおいしいのが特徴です。ベト病やボトリティス菌に弱いため、栽培には深くて空気を良く含んだ土壌を要します。乾燥した暖かい気候で最高のパフォーマンスを発揮します。しっかり成熟した果実のマストは非常に甘く、アルコール分の多い、酸の低いワインになります。

 

リースリング

この品種で作られたワインは、青リンゴやピーチ、レモンなどの豊かなフルーティなアロマとハッキリした酸が特徴で、優れたワインが生み出されることから、ここ数年は世界中で広く栽培されるようになりましたが、本来、ドイツ原産の白ブドウ品種なので、寒冷気候に育ち、遅霜にも耐性があります。ラ・マンチャでは、太陽への露出が多い環境に良く適応し、収穫量は低いことが多く、基本的にドライかつなめらかで酸があり瓶内で素晴らしい進化を遂げるワインができます。若いうちは口の中で爆発的な広がりをみせ、ボディのしっかりしたワインで樽熟成することでしっとり感が得られます。晩熟なので、秋の気候が暑かった場合はスイートワインに供されることもあります。

 

ソーヴィニョン・ブラン

ソーヴィニョン・ブランはロワール渓谷(フランス)原産の品種で、フランス語の“野生(sauvage)”と“ブドウ園(viña)”という言葉が合わさってできた名前です。非常に芳香高い品種で、乾燥気候にもなんとか適応しますが、寒冷気候に適応します。ラ・マンチャでは、素晴らしいアロマが得られることを考慮して、この品種の作付が著しく増加してきています。カスティーリャ・レオンやカタルーニャでも栽培されています。発芽は早く耐寒性があります。中程度の大きさの円筒形の房をつけ、黄色い麦わら色の果実で果皮は柔らかく果汁は非常に豊かなアロマがあります。

 

トロンテス

ガリシア地方原産の白ブドウ品種で、生産性が高く、保水力のある土壌でよく適合します。早熟な品種で、アルコール度は10°~12°程度、多少酸味があり香り豊かながら、ボディはあまりしっかりとしておらず、ややニュートラルな味わいで、収穫量の少ない他の品種とクパージュするのに理想的です。カスティーリャ・ラ・マンチャ州ではアリスという名前でも呼ばれます。

 

ベルデホ

発芽の早い白ブドウで、水平方向に成長する幹の樹勢が強い品種です。ルエダ(バリャドリード県)で圧倒的に多く見られ、我が国では最も優れた品種の一つとされ、非常に芳香高く、コクがあり、なめらかでソフトなワインになります。そのフレッシュ感、酸、しっとりした口当たりも格別で、口に含むと余韻の長い心地よい味わいです。ラ・マンチャでは最近導入されたばかりですが急激に伸びてきています。

 

ヴィオニエ

ローマ人がフランスにもたらしたとも言われますが、学説的にはコート・デュ・ローヌ北部の土着白ブドウ品種です。口に含んだ際しっかりした骨格と旨味があり果実味豊かなワインができる一方、房がコンパクトで果粒が小さく極めて病害に弱いため栽培は難しい品種です。マンゴーやアプリコットの香りにモクレンやスイカズラの花のタッチを伴う特徴的なアロマがあります。我が国では最近導入されて以来、暑い地域に適応しやすいことから、現在、ラ・マンチャで進んでいるように、徐々にその栽培地域が拡大しつつある見通しです。

 

マカベオ(ビウラ)

ビウラまたはマカベオという品種は、徐々に重要性を増してきてはいるものの、ラ・マンチャではあまり広く栽培されていません。ユダヤ指導者の一族、マカベア家(Macabeos)から名前を取った、エブロ盆地の原産種らしいと言われています。他の地域では、ブランカ・デ・ダロカ、アルカニョル、マカベウといった名前で知られます。非常に樹勢の強い株で、それが豊富な収穫量に現れています。発芽は遅く、果皮がもろいので収穫は注意深く短期間で行われます。大きくコンパクトで緑がかった黄色の房に、平均的な直径の果粒が成り、果汁は無色で糖とボディのバランスの良いのが特徴です。

 

シャルドネ

ブルゴーニュ地方(フランス)の原産で、その村の名前シャルドネから名前がつきました。世界中のワイン生産国で栽培されています。発芽が早く、かなり樹勢の強い木です。果皮がもろいので収穫は注意深く短期間で行われます。房は小さく、果実は琥珀色の小さい球状で、果皮は薄く、果肉はしっかりとしていて甘い味があります。様々な条件に適合し、若い白ワイン或いは熟成タイプやスパークリングの原料として用いられる汎用性の高さが、その成功の鍵となっています。

 

ゲヴュルツトラミネール

ドイツ原産の株で、房は小さく、果実は外側がピンクがかった色で、熟すと独特の際立った甘みがあります。フレッシュさが最大の特徴で、ラ・マンチャでは未だに栽培面積は少ないものの、この品種を導入したことでポジティブな成果が出ており、バラを主軸とする花を思わせる香りと、スパイスやハチミツの微かなノートを持った、強い芳香のわかりやすいアロマのワインが造られています。口に含むとフレッシュで力強く余韻があり柔らかい酸と心地よいフィニッシュを感じるワインになります。ドイツ語で“ゲヴュルツ(Gewürz)”は、ホット或いはスパイシーという意味で、時に14°に達するほどアルコール分が強い特徴もあるこのワインは、よくこのように形容されます。